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Bentham「MYNE」オフィシャルインタビュー<完全版>

2019.03.01 | OTHER

Benthamが完成させた2ndアルバム『MYNE』(読み:マイン)は、4人がロックバンドとして変革のときを迎えたことを伝える1枚になった。ライブハウスの熱狂や勢いだけを求めるのではなく、小関の歌を大切にした、より豊かな音楽を目指していく。それは一見「変わった」ように見えるが、本質的にはインディーズ時代からBenthamが追い求めてきたことでもある。今作は、彼らのパブリックイメージを塗り替える1枚になるはずだ。制作にはこれまで以上に時間をかけ、考えつく限りのパターンを試したという。以下のテキストから、そんな妥協のない日々を経て、いまの4人が得た大きな自信が伝わればと思う。



■ミディアムテンポのリード曲「cymbidium」で勝負する決断


――今回、初めてリード曲に「cymbidium」(読み:シンビジウム)っていうミディアムナンバーを選んだことが大きいですよね。


小関竜矢(Vo/Gt):勘違いを解きたかったんです。僕らの曲をより多くの人に聴いてもらいたいって思ったときに、なぜ、いままでTシャツ、ディッキーズ(ライブハウスで若者に人気のスタイル)の子たちを盛り上げることに躍起になっていたのかを考えたんですよね。僕らの活動を振り返ったときに、「僕から君へ」とか「アナログマン」「夜明けの歌」みたいな、僕が本当に言いたいを書いた歌心のある曲がいちばんの魅力かなって思ったんですよ。必ずしもライブで盛り上げることがいちばんじゃなかったというか。

須田原生(Gt):この曲をリードにするために、初めて本音で話し合ったのはデカかったですね。いままでは自信がなかったんですよ。みんなの体が動いてるとか、声が出てるとか、目に見えて盛り上がってるところしか見えてないところがあって。でも、最近は違いますね。体がノらなくても、ちゃんと良い顔で聴いてくれてれば、ちゃんと伝わってるんだなって感じてプレイできてるんです。だから今回は思い切ったことができたんです。

辻怜次(Ba):変わることを怖がらなくなったんですよね。

鈴木敬(Dr):年末のフェスでは「cymbidium」をやったんですよ。いままでワンマンではこういう曲調もやってたけど、フェスではやれないと思ってたんですけど。


――実際にやってみでどうでしたか?


鈴木:全然いけましたね。



――Benthamの「変わりたい」っていう変化の兆しは、去年の4月に出したシングル『Bulbous Bow』の頃からありましたよね。


小関:そう、『Bulbous Bow』では「変えていこう」っていうのを大きなテーマにしてトライしたんです。初めて野間(康介)さんにプロデュースに入ってもらったことで、いままで貫いていた、同期は使わないとか、俺らは4人だけの演奏にこだわるみたいな固定概念を取っ払うことができた。それで選択肢が増えたんですよね。


――新しい方向に舵を切ると、リスナーがどう反応するかは未知数だったと思うんですけど、蓋を開けてみたら、「変わっちゃたな」みたいにはならなくて。


小関:うん、「変わっちゃったな」みたいなムードにはならなかった。まあ……もうちょっと刺さるかなとは思ってましたけどね(笑)。リード曲の「FATEMOTION」も含めて。ライブでもスピーカーの出方とか音圧が変わってるのに、盛り上がりはそんなに変わってないんです。それが最初はショックだったんですよ。でも、逆に「memento」とか「Bandwagon」のリアクションは良い。っていうのを整理したときに、俺らが求められてるものは、ライブで盛り上げることじゃなかったんだって気づいたんです。


――それは小関くんの歌のちからを信じるっていうことですよね。


小関:そうですね。『Bulbous Bow』を出したことで、僕も自分の歌を信用しはじめたし、メンバーも僕の歌を信用しはじめましたね。


――いまやっと?


小関:やっと(笑)。……あ、そうだ。前作を作り終えて、僕いままで制作に関して、めちゃくちゃ我慢してたなと思ってたんですよ。


――我慢?


小関:それは別に誰かに対してじゃなくて、どれぐらい僕が顔を出せばいいか、わからなかったんですよ。でしゃばっちゃいけないとか、空回りしがらどうしよう?っていう不安があった。でも、今回は空回りをしても、メンバーがフォローしてくれたし、プロデューサー陣も「行っちゃっていいよ」って言ってくれたんです。それにおだてられて(笑)、今回は「僕はこういうのをやりたい」っていうのを全部解放してくれたんです。


――要するに、Benthamは「全員が主役でありたい」って言ってるけど、そのなかでも小関くんがフロントマンとして頭ひとつ抜けて主張する部分も必要だった。


小関:そう。歌詞も書いてるし。っていうなかで、今回は、自分で自分のやりたいことを見つめ直して、バンドを「自己プロデュース」することを意識したんです。だから、僕の現場での主張の仕方は変わったと思うけど、いままでがどうこうっていう空気を出さずに、メンバーが僕に手綱を渡してくれたのはデカかったです。


――メンバーから見ても、小関くんが我慢してるのは感じてました?


須田:我慢というか……いままでは小関が頭のなかでイメージしてても、実現できないことが多かったんだと思うんです。時間的な制約もあったし。でも、いまはやりたいことが10通りあったら、10通り試すことができるんですよ。だから納得できるんでしょうね。


■多彩な音楽性を武器にする


――「cymbidium」のプロデュースを手がけた野間康介さんとは、どういうコミュニケーションがありました?


小関:まず野間さんは「メロディが良いよね」って言ってくれて。僕が一定のジャンルに抱いてる偏見をほぐしてくれる作業がありましたね。僕はライブで再現できないことをやるのは嫌だったんですけど、「こう混ぜたら、美味しくなるよ」みたいなのを丁寧に教えてくれて。たぶん僕のメンタル面も考えてくれてるんです。


――具体的に野間さんのアイディアで解消された偏見っていうと?


小関:この曲、最初はサビ以外のところにコーラスをめっちゃ入れてたんですよ。アナログフィッシュみたいな感じで。でも、「これは入れないほうがいい」って言われたんです。でも、僕は納得できない。なぜだ? なんならこれがいちばん良いのに。しかも、サビには僕の声でコーラスを重ねてるんです。それも嫌だったんですよ。だって、ライブでコーラスを入れるのは僕じゃないから。でも、野間さんがちゃんと理由を説明してくれて……。

辻:そこ、俺も野間さん、すごいって思った。オゼ以外の声があると、主人公が多すぎる、感情が多すぎる。だったらオゼの声でコーラスを入れたほうがいいって言ってた。

小関:物語が崩れちゃうからってね。

須田:そういうのを曲単位で考えたことがなかったですね。全曲でバンドの方針を貫くのはわかりやすいんだけど、この曲はこういう曲だから、みたいな考えはなかった。

小関:っていうのを、ボーカル以外のメンバーも感じてるじゃないですか。それも強いと思うんです。一度、こういうコミュケーションがあると、次からメンバーもそこを考えるんですよ。「俺が歌うかな?」「これ、オゼだろうな」とか。そういう想像力を働かせることで、僕らのなかでハイレベルな話し合いができるようになりましたね。


――今回は小関くん以外のメンバーが作曲した曲が増えましたね。いままでも書いてはいたけど、比率は小関くんが多かった。でも今回はメンバー曲のほうが多くなってて。


小関:結果的にそうなりましたね。

辻:『Bulbous Bow』のツアーが終わったあとから、デモを出そうかっていう流れだったんですけど、今回はデモ出しをやれる回数が多かったんですよ。

須田:定期的にやったんだよね。

鈴木:7月から9月まで。

辻:月に1回、曲を持ち寄って、みんなで聴いて、「もっとこういうのがほしいよね」っていう話をして、また1ヵ月空いて、デモを出して。

須田:9月ぐらいにはデモが出揃ってから、アルバムに入れる曲を選んだんです。


――デモは何曲ぐらいあったんですか?


辻:50~60曲ぐらいあったかなと思いますね。

小関:選ぶときがいちばん揉めました(笑)。それで方向性が決まっちゃうじゃないですか。自分の曲を入れたいって主張をするのか、アルバムとして考えるかで葛藤もあるし。

須田:これは昔からなんですけど、どうしても自分の曲って押しづらいんです(笑)。


――他のみんなも?


鈴木:自分の曲は客観視しづらいからね。

辻:うん。他のメンバーの曲も良いし。


――意外。もっとみんな「自分の曲を!」なのかと思ってた。


須田:空気読み軍団なんですよ(笑)。

小関:今回の制作を通して、メンバーも曲を作ることが怖くなくなったんじゃないかなと思います。みんなでフォローし合って、自分のキャラが見えて、良い曲の作り方がわかった。いままでBenthamらしい曲っていうのは、基本的に僕が作ってたんですけど、いまはリード曲もメンバーにも任せられると思ってるんです。それを僕が手綱を握っていく。そこでミュージシャンっぽい会話ができるようになったのはうれしいですね。


――今回、楽曲の幅が広くなったのは、メンバー曲が増えたこともあるけど、プロデュースユニットのPRIMAGICがアレンジに関わっていることも大きいですか?


鈴木:チームのほうから、「カラフルなアルバムにしよう」みたいな提案があって。いかに曲ごとのキャラづけをするかは意識したんですよね。いままで踏み込まなかったところまで踏み込んでみたりとか、逆にいままでどおり4人の音以外は足さずに作った「ASOBI」みたいな曲もあるし。幅が広いけど、自分たちらしくできたと思います

須田:ちゃんと自分たちの素を出せたんです。

辻:メンバー全員がいろいろな音楽が好きだから、それが色濃く出たんです。このアルバムができたことで、多彩な音楽性もバンドの武器にできるんじゃないかと思いますね。


――PRIMAGICからの「カラフルにいく」っていう提案はすんなり受け入れられましたか?


辻:今回で2作目だからっていう信頼感はありました。野間さんとPRIMAGICのみなさんも、ライブを見にきてくださったんですよ。それで「今後こうしたいね」っていうのを一緒に考えてくれたんです。それが大きいですね。

須田:うん、大きかった。

小関:制作陣が僕らに希望を委ねてくれてるのが伝わるんです。俺らはバンドサウンドで行きたい、そのためにこういう武器を持たせてあげるからって。もともと僕は上ものをいっぱい重ねたら、音が軽くなるというか、チャラいと思ってたけど、実際にやってみたら、「うわ、めっちゃ切れるわ!」って気づいたんです。しかも、それをライブでは完全再現はしない。みんなに直接届けるのはライブだから、そこではバンドベースに持っていけるかなと思ってます。それで、いままの予定調和もぶっ壊せるんじゃないかなと思いますね。


■新しいBenthamと、これまでのBentham


――シンセを取り入れたダンスナンバー「MIRROR BALL」は新しいですもんね。


辻:もともとの着想はダフト・パンクの『ランダム・アクセス・メモリーズ』です。人力でクラブミュージックをやってるのがかっこいいなと思って。それをBentham流に落とし込めないかなっていうところからはじまりましたね。

小関:僕のなかのテーマは「もしもクラブに行ったら」なんですよ。

辻:それ、「もしもピアノが弾けたなら」じゃん(笑)。

小関:うん。ガチガチのクラブには行ったことがないから。ってなると、PRIMAGICの人たちとも、「やりすぎるぐらいのほうがダサくて面白いよね」っていう話をして。


――超ベタなダンスミュージックのほうが面白いっていう。


小関:なのに、Benthamがやると、サビがメロウなんです。ギターソロも良いもんね。

辻:最初、須田は控えめ感じにやってたから、「もっと、やり散らかしてよ」って言って。

須田:本当に最後の最後だったよね。「よっしゃ、レコーディング終わったー!」ってなってたのにそう言われて、「マジか……じゃあ、遊んじゃうよ」っていう感じで弾きましたね。


――新しい曲調も多いけど、「Cry Cry Cry」とか「BASSBALL」みたいな曲もあることで、いままでのBenthamのかっこよさも際立ったと思います。


辻:ちなみに、自分は「Cry Cry Cry」をリードにしたかったんです。これが、ザ・Benthamだから。やっぱりメニューが多いと、お店の不安が見えるって言うじゃないですか(笑)。だから「俺はこれを食わせたいんだぜ!」っていう定番メニューを通したかった。でも、みんなで変わっていこうぜっていう方向性があったから、いまは納得してますね。

小関:でも、その反対意見もうれしかったですよ。「Cry Cry Cry」が良いと思うのは、いままでのBenthamを認めるってことだから。


――アルバムを聴く人も、1曲目が「cymbidium」で驚くかもしれないけど、2曲目に「Cry Cry Cry」がくることで安心感がある。


辻:そうそう、3曲目じゃなくて、2曲目ですからね。

小関:すぐに自分たちの得意技を出す(笑)。

鈴木:それが大事でした。


――最後に入れてる「夜な夜な」は、スケール感のあるバラードになりましたね。


小関:この曲で印象的だったのは、ベースとドラムのチューニングですね。僕は細かい違いはわからないから、ドラムに関しては「ちょっと明るくないですか?」とか「シンバルうるさくないですか?」とか聞くぐらいで、基本的にはお任せなんです。でも、「夜な夜な」は1回録ったら、なんか違うかもね、みたいな空気感になって。ドラムのテックさんに調整してもらったあとの衝撃がスゴすぎたんです。最初とは全然違う。本当に「夜な夜な」のドラムになったんです。あれは涙が出るような感覚でしたね。

辻:僕はブースのなかにいたから、その感動が伝わってなかったんですけど(笑)。

小関:最後に、須田には試練として、「あとは任せた」って言ったんですよ。

辻:ぶん投げた。

小関:そこで、たぶん須田はオアシスみたいなきれいめのギターを入れるだろうなと思ったら、「エフェクティブなのを入れたいと思う」って言ってくれたのも面白かった。

須田:最初は古臭いギターのフレーズを考えたんですけどね。そのドラムとギターがきた瞬間に、それまで作ってたのを真っ白に戻したんです。良い音で作ってくれたドラムとベースが、僕のギターも変えてくれたんでしょうね。


――その話だけでも、良いチームのなかでバンドマジックが起きてるのが伝わります。


小関:うん。「夜な夜な」は僕にとって大事だから、それを最高の仕事で彩ってくれるのは、信頼度も変わってきますね。聴いた人がどういうリアクションになるかわからないけど、この曲は「夜明けの歌」みたいに、バンドになくてはならない曲になると思います。


■アルバムのタイトルは掘っても枯れない「鉱山」の意味


――アルバムのタイトルを「MYNE」にしたのは?


辻: MINEは鉱山っていう意味なんです。今回のアルバムを作っているなかで、「鉱山」っていう言葉がすごく頭にあって。掘っても、掘っても、俺らはどんどん良い曲を出していくし、良いライブをする。俺らは鉱山みたいなものだ、みたいなことを考えてたんです。でも、英語でMINEだと、I、MY、ME、MINEで使われる所有代名詞のMINEにも捉えられちゃうじゃないですか。で、調べたら、このMYNEのスペルで「鉱山」って意味を持つ言葉があったんです。アフリカにアフリカーンス語っていうのがあって。


――初めて聞きました。


辻:ご存知アフリカーンス語ですよ(笑)!?

小関:世界でいちばん使われてる言語アフリカーンス語!


――いやいや(笑)。


辻:そのMYNEの読みも、マインなんですよ。で、いろいろ調べているうちに、この綴りでゲルマンの言葉だと、愛情、希望、自分たちが渇望しているもの、みたいな意味もあるのがわかって。ひとつの言葉でこんなに意味があるから、これが良いと思いましたね。

小関:このタイトルはめちゃくちゃ気に入ってます。

辻:あまりにも決めるときに盛り上がったから、そのテンションで決めてると後悔するかもしれないってことで、次の日にもう1回話したんですけど、やっぱりMYNEでしたね。

小関:10曲そろってから決めました。


――今回のアルバムは完全にバンドのターニングポイントになりそうです。


辻:うん、すごく自信があります。

須田:「いろいろな要素があるのがBenthamだよ」っていうのを出せたし、いままで自分の好きなものとは違うと思ってた人も振り向かせることのできると思いますね。

小関:現段階の僕らの正解であり、嘘のないBenthamが詰まってる1枚ですね。ようやく純粋に音楽の良さを主張できるタイミングがきたんですよ。これを出すことで、いままでやってきたことも肯定ができると思うんです。勘違いもなくなるだろうし。だから、このアルバムは、今後も僕らはこうやってBenthamをやっていくよっていう意思表示でもありますね。僕らはこのままでは終われない。そういう覚悟を伝えたいです。



メンバーによるBentham「MYNE」楽曲解説


1. cymbidium

小関:実は、主人公は「僕」なんですけど、女性目線のつもりで書いたんですよ。冬に共通する恋愛模様を書いてみたくて。言っておきたいのが、僕の実体験ではないんです。「雪が溶けるほどではないね。」って言ったことないですからね(笑)。いままでは人のために歌詞を書くタイプじゃないけど、この曲は、冬になったらキュンキュンしてほしいっていう気持ちで書いたんです。こういうふうに作ったのは初めてです。


2. Cry Cry Cry

小関:負け犬讃歌ですね。自分のダメさとか、周りに対する負い目があって。自分がいる状況に誇りを持てないときがあるんです。親戚とか地元の友だちに会ったときに、「俺、バンドをやってるんだ」って言いづらい感じがするし。有名なミュージシャンなら、「もちろん知ってるよ」ってなりますけど。でも、いやいや、俺らもかっこいいし、胸を張れるじゃんって、自分に対して歌ってます。負け犬かもしれないけど、吠えられるだけよくない?っていうのがテーマです。それで、みんなでワオーンって叫ぶ声も入れてみました。

須田:まさかレコーディングで遠吠えをする日がくるとは、と思いましたけど。

辻:しかも、ひとりずつ録ったから恥ずかしかった(笑)。


3. Hope the youth

辻:オケチームはシンプル・イズ・ベストです。

小関:歌詞は「ウルトラマン」ファンの期待を裏切らずに書きたいなと思いました。小さいときに「ウルトラマン」を見ていたパパ世代が、自分の子どもと一緒にこの曲を聴いたときにポロッとくるような歌詞を心がけましたね。「未来が君のもの」っていうのも、パパの宝ものである子どもに対して、自分を救ってくれるヒーローは必ずいるし、悲しみに染まる世界を塗り替えてくれるって歌ってるんです。僕は、大丈夫なものは大丈夫っていうのを、若い世代に言いたいんですよ。簡単な曲ではないから、小さい子が歌えるのか?って言うと、アレなんですけど……。

鈴木:いや、それが歌えるらしいですよ。うれしいことに(笑)。


4. トワイライト

須田:メロディが強い曲を作りたいと思ったんですよね。最初は若々しい感じを出してたけど、レコーディングが進んでいくなかでエモい部分が出てきたんです。

小関:「さぁ泣いて笑って越えて行け」っていうところが、須田のデモの段階からあったんですよ。仮歌詞だけど、ちゃんとフックになる言葉を入れようと努力してるのがわかったんです。これ以上のパワーワードは出ない。だから、それを生かして、サビに向かって、1番を僕、2番を須田が歌詞を書いてます。お互いに思ってることを引き継ぐようなことができたから、俺らにしかわからない感動もある曲ですね。


5. five

須田:世界が広い感じの音が好みなので、それをやりたいなと思って作りました。

辻:須田の好きなシューゲイズの要素が入ってますよね。

須田:リードギターでこうだ!っていうより、コードとかバッキングを使った広いリズムのとり方でノリを出してます。

小関:須田のなかでは「5人目」っていう漠然としたテーマがあったみたいで。

須田:去年、関わるスタッフが入れ替わったりするなかで、「バンドが大丈夫なら、大丈夫だから」って言われたんです。でも、僕たちは自己満足だけでやってないから、やっぱり第三者の意見も大切にしたい。そういうのを出したかったんです。

小関:っていうのを聞いて、僕はバンドのことを言いたいんだって解釈したんです。だから、須田の想いに応えて、ふだん僕が書かないようなエモい感じで、メンバーへの手紙みたいな曲にしました。

辻:解釈は変えたけど、タイトルを変えなかったところに須田の意図が残ってます。


6. ASOBI

須田:変な曲を作りましたね(笑)。アルバムではバンドのエゴを出したいし、ミュージシャンとして自分たちが遊んでないとダメだから……。

鈴木:さっきは「自己満足じゃない」って言ってたのに(笑)。

一同:あはははは!

須田:それだけじゃ面白くないなと思って(笑)。変拍子ですけど、サビでは4/4に戻って、キャッチーな感じになってます。

鈴木:Benthamっぽいですよね。

辻:アレンジャーさんに「スラップで弾いてみたら?」って言われて、僕はひたすら弾(はじ)いてますね。

小関:この曲のベースがいちばん好き。歌詞の「サーティーエイジャーズ」は、須田も含めて、めでたく全員30代になりまして(笑)。須田の曲だし、これは入れなきゃと思いました。でも、自分たちのことだけで終わらずに、最後に「teenagers」に対して、「やりたいことだけやれば良いさ」って示せたのは大きな変化だと思いますね。


7. MIRROR BALL

辻:もともとの着想はダフト・パンクの『ランダム・アクセス・メモリーズ』なんです。人力でクラブミュージックをやってるのがかっこいいなと思って。それをBentham流に落とし込めないかなっていうところからはじまりましたね。

小関:毎作、辻くんはデモで全然バンドっぽくない曲を出すんですよ。それを懲りずに出してきたから生かしたいと思いました。辻くんはメンバーのなかでいちばんBentham愛があるんですよ。だから作っていくなかで、いままでのBenthamも自然に現れてます。

8. BASSBALL

辻:「Cry Cry Cry」と一緒で、「Benthamっぽいのを作ろう」っていうのが最初にあって、ベースとドラムで引っ張っていく曲を作りました。昔作った「タイムオーバー」を新しい感じのBenthamに落とし込めないかなっていうところですね。

小関:辻くんが使ってるエフェクターで、BASSBALLっていうのがあるんですよ。それが「野球」のBASEBALLとは違って、こっちの綴りなんです。

辻:自分が作ってるし、ベース始まりの曲だしっていうのでね。

小関:良いギミック感だよね。歌詞は、(Benthamがレギュラーを務めるJ-WAVEのラジオ番組「THE KINGS PLACE」で)恋愛における9回ツーアウト満塁っていうテーマを募集したんです。そしたら、「ファールで粘る」とか「ラッキーセブン」とかね。

辻:「揺れるポニーテール」とか。

須田:「売り切れ御免」もそうだね。それを散りばめてストーリーにしてますね。モテない丸刈りの野球少年がアルプススタンドのポニーテールの女の子を想像して「良い匂いだ~」って思ってる……っていうのを回想している、大人のサラリーマンの歌です(笑)。


9. SUTTA MONDA

鈴木:最初はBenthamを意識したところからはじめたのに、作り始めていくにつれて、自分の趣味が出てきてしまった感じですね。

辻:色がめっちゃ濃いですね。

小関:最近、敬はヒップホップを聴いてるから、韻を踏んでる感じに落とし込んでますよね。ここで思いっきりラップをやるのはまだ早いですけど、言葉遊びをしながら、ガレージに寄りつつっていうのは、敬らしいリスペクトを感じる曲だと思います。

鈴木:歌詞は、去年スタッフとスッタモンダがあったのがスタート地点です。そのあと、結果的に男同士でエッチな店とかに行ったら仲良くなっちゃうよねっていうバカバカしさがあって。スッタモンダと……吸ったり揉んだりっていうのは近いかなって。

一同:あはははは!


10. 夜な夜な

小関:本当にやりたいことをやりました。「five」のなかに「価値のある日々」っていう歌詞が出てくるんですけど、それはレコーディング中のことなんですね。こんな素晴らしい日々が続くように夢を見続けたい、そう思うぐらい楽しかったんです。で、最後に「夜な夜な」の歌詞を書くときに、改めて自分の良さは何だろうって考えたんです。それは嘘をつかないことなんですよ。それで、いまの僕ができることを詰め込みたくて。「一発で録らせてください」って提案したんです。実際は一発ではできなかったんですけど、補正をかけず、きれいじゃないところも含めて、僕の本当の歌を聴いてもらいたいと思ったので、ああいう歌唱になりました。歌詞は「cymbidium」と対になってます。女性から男性になって。女の人は良い思い出になるけど、男は夜な夜な考えてるよねっていう皮肉ですね。